コロナ期動物話2 ドードー鳥を捕まえろ!

ちなみに今日焙煎したコーヒー豆は
パプアニューギニア ハイランドスイート 200g1600円、100g800円
メキシコ クステペックSHG 200g1540円、100g770円 SHGはスペシャルハイグレードの略
中国雲南アラビカ200g1460円、100g730円

メキシコは中深焙り 甘みがいいね。 中国は深焙り 以前のような独特なクセはなくなりスマートで飲みやすい。
パプアニューギニアはちょっとベタつく手前まで焙ってみました。深いの好きな人にはクセになるかも。
なくなりしだい終了です😸

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ドードー鳥を捕まえろ!

桜の花びらが散って山も錦鯉の模様から新芽いっぱいの黄緑色に変わっています。
下の田んぼも所々水が入り、夕暮れにはカエルが楽しそうに鳴きだしています。
少しずつ温かくなるこの季節、桜の花びらが水面に浮かぶあの時のことを思い出しています。
小学校三年生の私と同い年の友達とで行った、山の下の池での出来事を。

たしか小学二年生の時に自転車を買ってもらいました。それまでは大人の自転車を立ちこぎで乗っていました。
運動神経、皆無に等しい私ですが、なぜか自転車だけは早いうちから乗れていました。
今、思い出しましたが、私は歩行器が得意で、家の長い廊下を猛スピードで走っては、
祖母にホウキでたたかれていました。

買ってもらった自転車は銀色に黄色の模様が入ったもので、「カッコいいなぁ」といつもぞうきんで磨いていました。
その日は、友達のしんちゃんと一緒に山の下の池まで一緒に遠足をしようと前日に約束した日でした。
日曜の午後です。二人とも新品の自転車を約二キロ、ふざけながらこぎました。
馬頭観音の石碑があって、これはなんだろねって後ろにまわってみたり、よじ昇ってみたり、
桑の木を見ては「蛇が枕にするんだって、ほら、そこヘビー」とか言いながら。
まったくバカな子どもですが、無事、池まで着きました。
池の水面には桜の花びらが浮かんでいました。
その花びらを腹ばいになってすくい、魚がいるかと水の底を覗きこみ、水に手を入れると、とても冷たく
二人、じゃれ合うように遊んでいました。
山は時々強い陽射しを受け、まぶしい黄色やオレンジ色に変わって、また雲がやってくると藍色に戻ります。

しばらくすると、池の向こう岸から年上の少年が私たちを呼んでいます。
いやな予感はしましたが、命じられるままそばに行くと
「おまえら、あの鳥を捕まえてこい」と言うのです。
彼が指差す方向を見ると、ガチョウのようなニワトリのような、まるで不思議の国のアリスに出てくる
ドードー鳥のような変な鳥が数羽、池の畔でガコガコいいながらエサを探しています。
一歳、年が違うだけで大きく感じたあの頃、相手はたぶん中学生です、私たちはことわる術を知りません。
命じられるまま、ドードー鳥を追いかけました。
鳥たちはしばらく追い回すと池の中に逃げてしまったので、
「これで勘弁してもらえるかなぁ?」
と、思っていると。
「おまえら、ズボン脱いでパンツいっちょで、鳥追いかけろ!」と言うのです、
しんちゃんは泣きべそをかいています。私も泣き出しそうです。
でも、私たちにはことわる術を持っていません。
命じられるまま、ズボンを脱いで冷たい池に入り、鳥を追う真似をします。
中学生の少年は楽しそうに笑っていました。
私たちは泣きべそをかきながら、池の縁の浅い所を歩きます。
パンツも濡れてびしょびしょです。

日暮れが近づき、空気が冷たくなって、山沿いに張り付く家々から夕仕度の煙が上がり、
黒い鳥が頭の上を飛んで行きます。
ポツリポツリと家の明かりが灯り始めたころ、私たちの無意味な仕事は終わりました。
どうして終わったか、まったく覚えていません。
濡れたパンツの上からズボンをはいて、泣きながら二人、猛スピードで家を目指しました。
田舎道を走る二人は、家々から流れてくる甘い晩ご飯の匂いに包まれていました。

しばらくするとその中学生は少年院に入ったと聞かされました。
そして、私たちが泣きながら走った田舎道は今、
ギター文化館と自宅を結ぶピカピカの舗装道路に変わっています。
この季節、新緑の山は愛宕山に鐘転山、難台山、奥には吾国山。
梨の白い花が咲き始め、もう少しで藤の花。
最高のドライブスポットです。

あんな池、もう絶対行くもんか!と思っていた私はほぼ毎日ここを通っているのです。
不思議なことです。

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