本屋で立ち読みしてたら売れてる本のコーナーに「悲しみの底で猫に教わった一番大切な事」という本があった。何年か前にも「すべて大切な事は猫に教わった」とかいう本があって、その間にも猫に教わる的な本がいくつかあったと思うのだが、そんなに猫は大切な事を教えてくれるのか。 と家に帰って試しに一番小さな猫を持ち上げて聞いてみた。
「お義父さんに何か教えなさい」
赤白の細長い猫だ。猫は鼻をプスプスさせながら、赤い口を開けて声にならない声をあげている。鼻がつまって上手に声を出せないのだ。鼻水と目ヤニをいつも出していて、拭いてやるのだが、すぐにつまってプスプスしてしまう。大飯食らいで、そのくせ痩せている。「おまえに教わる事が何かあるのかよ」とティッシュで鼻水を拭いてやりながら思った。
「やっぱり、こいつに教わる事はないな」
この頃はぜんぜん大きくならないので、おばあちゃんが人間用の鼻炎の薬を点けている。「少し調子いいみたい」というが、あいかわらずプスプスしている。そんな猫が今日は体調が悪かったようだ。鱈ちりの残りのタラの皮をあげても食べない。いつもならアウアウ言いながら食べるのに、動きもゆっくりで床に下ろすと、コタツのある部屋にトボトボと帰って行った。
おばあちゃんに今日の赤猫の様子を聞いてみた。
「午前中、お風呂に落ちて、午後から変な虫とトカゲみたいなのをくわえてきた」と
なんか、大切な事を教わったような気がした。